淫狼の生贄 第17回 女子大院生(2)
駐車場からエレベーターで各階へ直行できるようになっていたが、安本は一度一階のフロントへ寄った。
「レストランの席は大丈夫です。いま予約しました」
安本は美加子をエスコートするように腕を出した。そのスマートさに、美加子も何気なく腕を絡ます。そして、そのままエレベーターへ向かった。
レストランは最上階にあった。6階建てなのでそれほど高くはないが、周囲にそれ以上高い建物が無いので見晴らしは良かった。とはいっても、もう夕闇が迫っている。遠くに霞む恵須市の明かりがちらほらと見える位で、たいした夜景でもなかった。
飲めば飲めるのだが、この後車で帰らなければならないので、美加子はアルコールを断った。安本も無理強いはせず自分用にグラスワインを取り、美加子にはジンジャエールを注文してくれた。
フランス料理のフルコースであったが、安本が言っていたほどおいしいとは思えなかった。可もなく不可もなくである。
それでも、安本と話をしながら摂る食事は楽しかった。
聞き上手の安本に、美加子は自分の身の上をかなり話していた。
「そうですか、婚約者がいるのですか」
フィアンセの長沼の話をしたときには、安本はがっかりしたような顔をした。
「ええ、お世話になった伯父の勧めなので・・・」
「じゃあ、もう結婚の準備も」
「マスターを卒業したらということで」
「一番楽しい時期ですね。一緒に旅行なんかも?」
「ええ・・・一度だけ、伯父の勧めで彼の仕事を兼ねて、カナダへ」
そのとき、初めて美加子は長沼に躰を開いた。美加子より十歳も年上の長沼だったが、まるで美加子を主家のお姫様を扱うように優しく扱ってくれた。暗い中でほとんど肌を曝すこともなく済んでしまい、美加子の躯は何も感じなかった。美加子には長沼とこれで夫婦になるのだという感慨だけが残っていた。帰国後は長沼が遠慮しているのか、その機会もないまま今日まで来てしまっていた。
もちろん、こんなことまでは話さなかったが、二人でカナダへ行ったということだけで、安本にはその関係が判ったであろう。
デザートが終ると、その後はまるで他人行儀でエレベーターまで送ってきた。
「とりあえず駐車場まで送りますよ」
そう言って一緒にエレベーターに乗ったが、来る時のようなエスコートも無く、黙りこくったままであった。
駐車場は地下だったので、美加子はB1のボタンを押す。エレベーターは静かに下降を始めた。
フィアンセの話などしなければよかったと美加子は一寸後悔していた。この背の高いハンサムな安本に、ここで抱きしめてもらえたら・・・しかし、そんなことも起きずにエレベーターは地階に着いたらしくドアが静かに開いた。
「安本さん待ってましたよ」
ドアが開いた所は、駐車場ではなかった。ドアの先には薄暗い廊下が伸びている。男が二人立ちふさがるようにドアの前にいた。
「安本さん、ここは?」
「今夜お嬢さんに過ごして貰う所ですよ。エレベーターに仕掛けがあって、ここは地下2階、駐車場は地下1階なんですね。今乗ったエレベーターは、さっきのとは違っていて、B1を押すと地下2階に来てしまう。さあ、降りるんだ」
後ろから、今までの優しい態度から一変して、安本が美加子の背中を強く押し出した。その力でよろめく様にエレベーターを降りた美加子を、外の二人が抱きとめる。
150センチ一寸の小柄な美加子は、三人の男に埋もれたように取り囲まれてしまった。
「とりあえず、このまま縛りあげるのだ」
「このベルトでいい」
外にいた二人にがっしりと抑えられると、安本にワンピースのベルトを抜かれる。バッグを奪われると、両腕を後ろに回されて、両手首を交差して縛られてしまった。
それだけで、美加子は足がなえたように動けなくなってしまった。
「蒔田さん、早速部屋に連れて行ってもらおうか」
安本が男の一人に声を掛ける。
「ほら、歩くんだよ。なんだ、歩けないのか。並木、背負てってやれ」
蒔田に並木と呼ばれた男が倒れそうな美加子を肩に担ぎ上げる。そのとたんはいていたパンプスも脱げてしまった。
エレベーターの先に続く廊下の先には、片開きのドアがあった。
蒔田がそれをを開いた。中には2メートルくらいの空間があり、その先にもう一つドアがある。まるでコンサート会場のドアのようだ。
内側のドアの先は薄暗い部屋である。というよりは、足下を照らすだけの照明が点いているだけであった。
「ヨイショッと」
並木が肩に担いでいた美加子を床に下ろした。美加子はそのままごろりと横になってしまう。木の床らしい。
突然、明かりが点けられた。今まで暗さになれていた目には開いていられないほど眩しい。
美加子は一瞬目をつぶって、その後おそるおそる開いた。
フローリングの床が広がっている。顔が床についていることもるが、かなり広く見える。
その床から天井に太めの木の柱が数本、規則正しく立っている。その柱にはほぼ等間隔に四角い孔が開いている。
辺りの壁は、厚手の重そうな黒いカーテンで覆われ隙間もない。
さらに首を動かしてみると、ベッドやら、なにやら得体の知れない台やら、訳の分からないものが乗っている棚が見える。
そのほか、柱より細い角材が何本か転がっている。一体何をするところなのだろうか。

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安本は美加子をエスコートするように腕を出した。そのスマートさに、美加子も何気なく腕を絡ます。そして、そのままエレベーターへ向かった。
レストランは最上階にあった。6階建てなのでそれほど高くはないが、周囲にそれ以上高い建物が無いので見晴らしは良かった。とはいっても、もう夕闇が迫っている。遠くに霞む恵須市の明かりがちらほらと見える位で、たいした夜景でもなかった。
飲めば飲めるのだが、この後車で帰らなければならないので、美加子はアルコールを断った。安本も無理強いはせず自分用にグラスワインを取り、美加子にはジンジャエールを注文してくれた。
フランス料理のフルコースであったが、安本が言っていたほどおいしいとは思えなかった。可もなく不可もなくである。
それでも、安本と話をしながら摂る食事は楽しかった。
聞き上手の安本に、美加子は自分の身の上をかなり話していた。
「そうですか、婚約者がいるのですか」
フィアンセの長沼の話をしたときには、安本はがっかりしたような顔をした。
「ええ、お世話になった伯父の勧めなので・・・」
「じゃあ、もう結婚の準備も」
「マスターを卒業したらということで」
「一番楽しい時期ですね。一緒に旅行なんかも?」
「ええ・・・一度だけ、伯父の勧めで彼の仕事を兼ねて、カナダへ」
そのとき、初めて美加子は長沼に躰を開いた。美加子より十歳も年上の長沼だったが、まるで美加子を主家のお姫様を扱うように優しく扱ってくれた。暗い中でほとんど肌を曝すこともなく済んでしまい、美加子の躯は何も感じなかった。美加子には長沼とこれで夫婦になるのだという感慨だけが残っていた。帰国後は長沼が遠慮しているのか、その機会もないまま今日まで来てしまっていた。
もちろん、こんなことまでは話さなかったが、二人でカナダへ行ったということだけで、安本にはその関係が判ったであろう。
デザートが終ると、その後はまるで他人行儀でエレベーターまで送ってきた。
「とりあえず駐車場まで送りますよ」
そう言って一緒にエレベーターに乗ったが、来る時のようなエスコートも無く、黙りこくったままであった。
駐車場は地下だったので、美加子はB1のボタンを押す。エレベーターは静かに下降を始めた。
フィアンセの話などしなければよかったと美加子は一寸後悔していた。この背の高いハンサムな安本に、ここで抱きしめてもらえたら・・・しかし、そんなことも起きずにエレベーターは地階に着いたらしくドアが静かに開いた。
「安本さん待ってましたよ」
ドアが開いた所は、駐車場ではなかった。ドアの先には薄暗い廊下が伸びている。男が二人立ちふさがるようにドアの前にいた。
「安本さん、ここは?」
「今夜お嬢さんに過ごして貰う所ですよ。エレベーターに仕掛けがあって、ここは地下2階、駐車場は地下1階なんですね。今乗ったエレベーターは、さっきのとは違っていて、B1を押すと地下2階に来てしまう。さあ、降りるんだ」
後ろから、今までの優しい態度から一変して、安本が美加子の背中を強く押し出した。その力でよろめく様にエレベーターを降りた美加子を、外の二人が抱きとめる。
150センチ一寸の小柄な美加子は、三人の男に埋もれたように取り囲まれてしまった。
「とりあえず、このまま縛りあげるのだ」
「このベルトでいい」
外にいた二人にがっしりと抑えられると、安本にワンピースのベルトを抜かれる。バッグを奪われると、両腕を後ろに回されて、両手首を交差して縛られてしまった。
それだけで、美加子は足がなえたように動けなくなってしまった。
「蒔田さん、早速部屋に連れて行ってもらおうか」
安本が男の一人に声を掛ける。
「ほら、歩くんだよ。なんだ、歩けないのか。並木、背負てってやれ」
蒔田に並木と呼ばれた男が倒れそうな美加子を肩に担ぎ上げる。そのとたんはいていたパンプスも脱げてしまった。
エレベーターの先に続く廊下の先には、片開きのドアがあった。
蒔田がそれをを開いた。中には2メートルくらいの空間があり、その先にもう一つドアがある。まるでコンサート会場のドアのようだ。
内側のドアの先は薄暗い部屋である。というよりは、足下を照らすだけの照明が点いているだけであった。
「ヨイショッと」
並木が肩に担いでいた美加子を床に下ろした。美加子はそのままごろりと横になってしまう。木の床らしい。
突然、明かりが点けられた。今まで暗さになれていた目には開いていられないほど眩しい。
美加子は一瞬目をつぶって、その後おそるおそる開いた。
フローリングの床が広がっている。顔が床についていることもるが、かなり広く見える。
その床から天井に太めの木の柱が数本、規則正しく立っている。その柱にはほぼ等間隔に四角い孔が開いている。
辺りの壁は、厚手の重そうな黒いカーテンで覆われ隙間もない。
さらに首を動かしてみると、ベッドやら、なにやら得体の知れない台やら、訳の分からないものが乗っている棚が見える。
そのほか、柱より細い角材が何本か転がっている。一体何をするところなのだろうか。

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